« June 2014 | Main | August 2014 »

July 2014

July 29, 2014

田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」

Dscn0817

田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」(講談社)。

風変りなタイトルに惹かれて、読んでみた。

著者は岡山の古民家で日本古来の酒造りの方法に則って
天然の麹菌をいかしたパンづくりをされている
「パン屋タルマーリー」の渡邉格(いたる)さん。

東京で生まれ、31歳でパン職人になることを決意し、奥さんとともに
千葉で店を開き、東日本大震災をきっかけに家族で岡山に移住した。

パン屋さんになるきっかけや天然菌を追究していったその道筋には
渡邉さんならではの力強い物語がある。

開業物語と並行して渡邉さんはマルクスの『資本論』の超訳を伝える。
今の世の中の仕組みを考えさせられる。

わたしは、最近読んで、地域経済の自立について考えた、
『里山資本主義』(藻谷浩介・NHK広島取材班)のことも思い出した。

渡邉さんは地域通貨のようなパンを目指すと言う。
「つくって売れば売るほど、地域の経済が活性化し、地域で暮らす人が
豊かになり、地域の自然と環境が生態系の豊かさと多様性を
取り戻していくパン」。

その仕事=生き方に心をつかまれた。
いつか、岡山に行って、タルマーリーのパンを食べてみたいと思う。


| | Comments (0)

July 15, 2014

まいにち、パン。

Dscn0729

アンデルセン名誉マイスター、城田幸信さんのことを綴った『まいにち、パン。』(主婦と生活社)を読む。
ちょっと雑誌のような編集の本だ。

昨年出版された『アンデルセン物語』(新潮社)にはアンデルセンの創始者、高木俊介、彬子夫妻のことが書かれているが、もうひとり、このひとなくしてはアンデルセンを語れない、城田幸信というひとの物語がそこにある。

城田さんは16歳からアンデルセンの前身、タカキのパンに入社、デニッシュペストリーや冷凍生地の技術開発に携わったひとだ。

城田さんには、アメリカの製パン企業やフランスの国立製パン学校で、また、デンマークなど海外から招いた技術者に学んだことを、ときに絵を添えて記す、直筆のノートというのがある。「勉強する気のあるひとは誰でも借りて写していいよ」と言っていたというそのノートは、手帳にメモしたことを清書し、更新し続けられたという。

Dscn0728

これをみてみたい。そのまま、本にできたら、きっと素敵だなぁ、などと思いながら、読む。

中ほどに、家庭製パンのいくつかのレシピが載っている。ベーカーズパーセントなど、初歩的なところから説明がある。テーブルロールやイギリスパン、デニッシュペストリーなど、ベーシックなパンのつくりかたが、丁寧に説明されている。

パンは失敗したら、もう一度やってみよう、というのではなくて、なぜ失敗したのかを考えることでうまくやけるようになる。いまやっていることは、何のためにやっているのか、理由を考えることが大切。そんな、あたりまえのようでいて、とても大切なことが書かれている。

真のパン職人のことばだ。

こういうひとの仕事のおかげで、今の日本のパンがある。

城田さんは今年の5月に永眠されたそうだ。心より、ご冥福をお祈りします。

冒頭には山荘でパンを焼いて休日を過ごす、優しそうな城田さんの笑顔がある。

| | Comments (0)

July 10, 2014

セドリック・カサノバのラ・ターブル・ユニーク

2

パリでオリーブオイルなどシシリア産の食材を扱う「ラ・テット・ダン・レ・ゾリーブ」のセドリック・カサノバさん来日に伴い、CREMAの勅使河原加奈子さんが明治神宮前のCook&Coにて開催したイベント「ラ・ターブル・ユニーク」に出席しました。

3

それは今後日本への輸出が予定されている6種類のシシリア産オリーブオイル、ハーブのブーケ、ケイパー、マグロのカラスミ、マグロのブレサオーラなどのテイスティングの機会でした。

6

セドリックさんはイタリア系フランス人で、「シルク・ドゥ・ソレイユ」で綱渡り芸人をして世界を巡ったこともあったそう。後に父方の故郷、シシリアで家族経営の小規模農家を助けたいという想いからこの仕事を始め、現在は60軒以上の農家と契約、古代品種や地元品種の自然農法のオリーブの生産から商品化、販売までを行い、アラン・デュカスなどガストロノミーの料理人を顧客に持っています。

5

「オリーブの実が木から離れた時からがわたしの仕事」とセドリックさんは言います。
オリーブオイルに大切なのは、木が健康であるということ、機械で絞る温度が適温であるということ。

4

セドリックさんの手がけるオリーブオイルのラベルには「フランチェスコさんの畑のビアンコリーラ種」といったふうに書かれています。シシリアのお年寄りはブレンドしたほうがボディがしっかりして長持ちするというけれど、単一品種で売るのはアイデンティティがはっきりするのだそうです。

まろやかなオイルの中に、青草のような、柑橘のような、苦み、酸味、甘味、いろいろな要素が感じられます。何が何に合うとかいうのは好みの問題で、料理人の感性、イマジネーション次第でさまざまな料理への展開ができそうです。

7

シシリアの家庭では4人家族で年間150~200リットルものオリーブオイルを消費するのだそうですが、日本人がどんなオリーブオイルをおいしいと思い、どのように愉しむかを知りたい、とセドリックさん。オイルの他にも、子供の頃から慣れ親しんだ味を携えてやってきて、スライスしたり削ったり、オリーブオイルをまわしかけたり、シンプルな一皿をつくっては、テーブルを囲む料理人や食のジャーナリストの感想に耳を傾けていました。

11_2

12_2

セドリックさんはシシリアの気候のもとで、旨味の濃縮されたドライトマトや、まるで干し椎茸のように見えるドライナスもつくっています。

8

オレガノやバジルの花束も乾燥させて商品にしています。葉ばかりでなく花も素敵に香るのです。ピエール・エルメはこれでマカロンをつくったのだとか。

セドリックさんの考える、シシリアの料理と日本の料理の共通点は、料理に2、3種類の味の柱が基本としてあって、それらが混ざりすぎていないこと。何の素材の味がするということがはっきりわかるところ、ということでした。

乾燥させた食材のほか、シシリアの塩で保存性を高めた食材もいろいろありました。

9

10

ケイパーは大きさ不揃いの無選別。7月になると虫がつくので収穫を急がなければならない。粒を揃えている時間がない、のだそうです。これをご飯にのせて、ペコリーノを削り、オリーブオイルをかけたご飯は絶品でした。

日本なのでパンでなくあえてご飯にされたそうですが、このテーブルで味わったものはすべて、パンにも合います。もちろん、パスタにも。

15

16_2

マグロはトンルージュ(クロマグロ)を3週間塩漬けしたブレサオーラをフェンネルとオリーブオイルで。

21_3

22_2

ソシソンは内臓なども含めて切り落としのマグロを固めて発酵させたもの。卵巣を天日干ししたカラスミもありました。

18

14

このあたりで日本酒が登場。日置桜の純米吟醸「強力」。さすが日本酒のお仕事にも携わっている勅使河原さん。フレンチやイタリアンにもお燗が、これからのトレンドになってくるかもしれません。

20

13_2

さて、コリアンダーとミントをニンジンで巻いてシシリアのフレッシュタイプではないリコッタチーズをかけ、レモンとオリーブオイルを絞った箸休め的な一皿など、初めてのような初めてでないような、記憶のどこかにある味だったけれども、「発芽するものは生でも食べる」と勧められた生のヒヨコ豆はかなり青い、初めての味がしました。

17

19

セドリックさんのラ・ターブル・ユニーク。どの食材にも素材の凝縮された旨味とそれを支える塩とオリーブオイルとシシリアの太陽の光を感じました。同席のシェフたちはきっともう頭の中で料理を始めていたはず。近い将来、これらの食材と料理人の感性でどんな一皿が創造されるのか、楽しみです。

最後に。最初のお皿に乗っていた一輪の薔薇のような食材は、ロゼッタペペロンチーノ。唐辛子なのだそうです。このセンス、ロマンチックでした。

1

| | Comments (0)

July 06, 2014

東日本大震災復興支援・第8回チャリティー製パン講習会

11

7月4日、日清製粉株式会社小網町加工技術センターにて、8回目になるチャリティー製パン講習会が開催され、受講料315,500円が「あしなが育英会東日本大震災津波遺児支援募金」に寄付されました。

講師は発起人でレギュラーメンバーの山﨑豊さん、伊原靖友さん、井上克哉さんのほか、今回は「クラブハリエジュブリルタン」統括シェフの小金井利嗣さん、「パン工房ぐるぐる」オーナーシェフの栗原淳平さんが務め、デモンストレーションが行われました。

チャリティー講習会はいつもの和やかな雰囲気でスタート。受講者からの挙手が多く、質問が飛び交うのがこの講習会の特長です。山﨑さん、伊原さんらが時々、要点をおさえた質問を講師に投げかけるすることで受講者は大事なポイントを見逃すことなく、スマートな進行役に、彼らは教えるプロでもあることに、あらためて感じ入ります。

12

井上さんの「気仙味噌パン」はイタリアパン用の「ルスティカ」を使用。フランスパン生地の発酵種とドライイースト併用で、短い発酵で仕上げます。気仙味噌20%使用。塩は入りません。やわらかなフォカッチャタイプの味噌パンは日本の食卓に馴染みそうです。

21

栗原さんは茨城県ひたちなか市でパンを焼かれています。「朝ご飯として食パンの代わりにもなる、こういうパンも広めていけたら」と吸水の多いパン・ド・カンパーニュとそのバリエーション(クルミとクランベリー)を紹介。「リスドオル」に「オーション」という灰分の高い粉をブレンドしています。個人的にとても好きな味でした。

24

チーズやネギの入ったフランスパンも紹介されました。10%のネギを生地に入れるときには、ネギから水分が出ないように手ごねします。その分ミキサーは他のパンに使えるという利点もあります。

22

23

栗原さんのもう一つのパンは、「ごはんぱん」。1kgの粉に対し0.5合の炊いたお米が入っています。お米は栗原さんのご実家「栗原農園」のもの。米を米粉にするのはお金がかかる。ならばご飯を湯種のようにして使ってみてはという発想から生まれたこのパンは、油脂にはラードを使用して伸展性よくコクを出し、乳製品と卵を使用せずに柔らかく食べやすいパンに仕上がっています。店ではヒジキや高菜などを包んだものも販売。この日はキンピラを包みました。

25

26

31

小金井さんの「プレシアンス」(フランス語で”予感がする”の意)はコンテスト用につくられたパン。手間がかかりすぎるので販売には向かないようですが、こういうパンの組み立て方があったのか、と息をのむおもしろさ、でした。

32

33

まず、型が個性的、と思ったら、セルクル、ボンブ(半球)型、コロネ型を組み合わせたものでした。チョコレートの菓子パン生地に合う甘味と酸味を考えてケフィアヨーグルトを使った牛乳種を用い、それをもとにした発酵種には出来上がったパンを冷やしてもかたくならないように液状ショートニングなども使っています。バターや加糖卵黄、生クリームやチョコチップ等々、多種類の素材を配合したチョコパン生地が、その型で焼かれ、冷やされ、うすく伸ばしてらせん状に切れ目を入れたデニッシュ生地をかぶせてさらに焼かれます。

34

35

36

仕上げはガナッシュクリームとグリオットチェリー。素材やレシピについての記述は他のパンの約3倍。ほんとうに、お菓子のようなパンでした。

37

38

小金井さんはこのほかに、クランベリーをはじめとするベリー類やリンゴを使った紅白の「Kotobuki」、ブルーベリーとイチジク、シャルドネと紅茶を使った「シャルドネ・ダージリン」を実演紹介しました。

39

310

311


ランチタイムには、山﨑さんのとうもろこしのチャバタ、海藻のパン(やきまつも、ふのり、しょうゆ、餅粉入り)なども並びました。伊原さんは今回、陸前帆立を贅沢に使ったクラムチャウダーやチキンのハーブ焼き、サラダにはグレープフルーツたっぷりのドレッシングなど、パンに合わせる料理を担当されました。

13


今回は「希望のりんご」プロジェクトを主宰される池田浩明さんの提案もあり、東北の素材が意識的に使わたことも、とてもよかったと思います。

今後も山﨑さんらによるチャリティー講習会は続きます。10月には名古屋、11月には京都での開催が予定されています。

【Bread Journal及びAll About取材による過去のチャリティー関連記事】

第5回 2013.2

番外編(3人のシェフによるパネルディスカッション)2012.8

同(Bread Journal Facebook)

第4回-1 2012.7

第4回-2

第2回 2012.3

第1回 2011.8

| | Comments (0)

July 03, 2014

ジャムとパンのおいしい関係@北欧、暮らしの道具店

Photo1


先月、ここでもちょっと書きましたが、「北欧、暮らしの道具店」の特集で
料理家のフルタヨウコさんと「ジャムとパンのおいしい関係」についての対談をさせていただきました。

心地よいテラスで、キッチンで。食べながら、お喋りしながら。

とてもかわいいサイトです。

ジャムとパンのおいしい関係 1~5話

【KURASHI&Trips通信】ブレッドジャーナリスト清水さんとの出会い。

【KURASHI&Trips通信】ジャムとパンのおいしい関係 番外編

| | Comments (0)

July 02, 2014

テレビ静岡「静岡フードミュージアム構想」続編

テレビ静岡の「てっぺん静岡」番組内で「静岡フードミュージアム構想」なるコーナーの続編があった。
「マルコ・デュ・パン」という店の職人さんたちが、静岡食材を使ったご当地パンの商品開発に挑む。

先日もここで書いたけれど、わたしは、京都でパン教室をされている内村浩一さんと、パンの愛好家の片山智香子さんと、審査員として出演させていただいた。

Dscn0392

ご当地パンとして選ばれたのは井上聖士さんの「ニューサマーオレンジブリオッシュリング」と吉村祐美子さんの「静岡産やぶきた茶の富士山カンパーニュ」。ふたりとも、技の光る職人さんだ。

商品である限り、売れなければ始まらない。選ばれたふたつは、お客さんの反応を見るということで前宣伝なく店頭に並んだ。予測通り、カンパーニュが、慣れない見た目と買いにくい価格で苦戦していた。でもそのあと、機転をきかせた店長の指示で、ブリオッシュはプチサイズで、カンパーニュはカットすることで、より多くのお客さんに買ってもらうことに成功した。

言い訳だけれど、わたしはテレビで話すのが得意ではない。瞬発的に的を得たことを言って伝える難しさをいつも思う。で、今回も終わって、おそらくカメラが回っていないときに、カットしたりプチサイズで販売してはどうかという提案をしていたのだけれども。

7月1日に放送された番組で、ほぼ完売したときに店長が「清水さんでしたっけ。パンはシェアするものだからって。それをヒントにしたんです」と言ってにっこりとしてくださったのをみて、胸が一杯になった。

Dscn0701

片山さんには前回、「こんなに熱くなる清水さん、初めてみました」と言われた。
それは、吉村さんのカンパーニュがおいしかったので、「マルコ・デュ・パン」は石窯パンのお店なのだし、こういうパンをもっとつくって、静岡のひとに食べてもらわなくちゃ!と、そんな気持ちになったからだった。

井上さんのニューサマーオレンジのパンは見た目もはなやかで、きっと誰もが好きな味。でも吉村さんのパンは、見た目では想像がつかないかもしれない。購入は冒険になってしまうのだろう。こういうとき、ことばが必要になってくる。

Bread Journalの読者に説明するなら、こんな感じのパンだ。

北海道産の小麦粉に富士山の天然水で水出しした静岡のやぶきた茶で仕込んだ高加水のカンパーニュ。中には、ほのかに甘く、ほろ苦い特製の茶葉ペーストが練り込まれ、お茶の存在感を出している。

ニューサマーオレンジは季節があるので、自家製のピールが切れてしまったら終わりで、通年は難しい。それもいいと思う。来年はニューサマーオレンジをいっぱい仕込めるといいな、と思う。そしてカンパーニュはゆっくり定番化、するといいなぁ。

それにしても、テレビのひとも、パン屋さんも、静岡への地元愛が感じられる番組だった。ほのぼのと、みんなを幸せにする感じの。

なんでも早く安く簡単にの時代にあって、数か月かけてひとつのパンを生み出そうとする職人さんの、そして、そのパン屋さんに通い詰めてこんな番組をつくる制作会社のひとたちの、丁寧な仕事を想った。

このひと月ばかり、貴重な体験をさせてもらいました。

| | Comments (0)

« June 2014 | Main | August 2014 »