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December 2013

December 28, 2013

『和食の知られざる世界』

日本人の伝統的な食文化、和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたことで、和食についてあらためて考える機会を持つ人も多いかもしれない。

タイムリーに、先ごろ出版されたばかりの辻調グループ代表の辻芳樹さんの『和食の知られざる世界』(新潮新書)を拝読して、海外における和食について興味深く感じた。世界に発信された和食を3つに分けたところなど。

日本人からみて和食とは呼べないけれど和食っぽい素材や見た目、カリフォルニアロールのような「ギミック和食」。それじたいは和食ではないが、フレンチの料理人などが日本の料理技術の影響を受けて昆布出汁や山葵などを用いる「ハイブリッド和食」、その国にある素材を用い、異文化で好まれる味、たとえばトマトウォーターの出汁などを用いるなどした新味の和食「プログレッシブ和食」。

異文化のなかに進出して商売をする時、必要なのは変換する力、それは文学でいえば「翻訳」と辻さんは言う。翻訳された料理は、たとえば、NYに進出した一風堂のラーメンだ。欧米のアッパークラスの食習慣にならって前菜から始めるコース仕立てに変換されたメニュー構成で成功をおさめている。日本のラーメンが他国のラーメンより上質だから、というだけではなくて。

一風堂がNYに進出して1号店を開いた頃、わたしは博多で河原成美さんとお会いしている。まわりにいるみんなを明るく元気にするような方だ。彼はベーカリー事業も手掛けていた。パンについてどんな話をしたのだったか。

パンは、フランスから入ってきたパンは、博多の何店舗かの店で、メロンパンのようにギミックに、明太フランスのようにハイブリッドに、いろいろに変換されて続いている。食文化の出入国。食文化を読みとり翻訳する力はパンにも活かせるのではないか。

話がそれてしまった。

この本で個人的に心惹かれたのは、和食の一流料理店について書かれたところだ。
「草喰なかひがし」と「壬生」。いいな、行ってみたいなぁと思う。そうそう行くことは叶わなそうだけれども。

今までの人生で最高の和食は、いつどこでいただいたものだったか。
それをわたしはどんなふうに味わっていただろうか。

茶道の稽古を始めてからは初釜や炉開きなどの茶事で懐石料理をいただく機会に恵まれている。わたしもこのようにして人をもてなすことができるようになりたい、と思わせられる料理だ。

年の終わりに黒豆など炊きながら、和食について書かれた本を読み、和食に想いを巡らした。明日の朝になればいつものように網でパンを焼く日常ではあるけれど。


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December 27, 2013

Year's end sweets

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今年のクリスマスはsens et sens(サンス エ サンス)のシュトレンでカウントダウンした。
とても丁寧につくられたシュトレンだった。

自家製レーズン酵母、北海道産の小麦。無花果や杏の瑞々しさがよかった。
スライスして皿にのせると、年末の慌ただしさがすっと鎮まる心地がした。
sens et sensのあの、シェーカースタイルを想わせるようなカフェ空間が思いだされた。

酵母やドライフルーツのもととなった果実の経てきた時間が、北海道の小麦粉に携わって来たひとたちの想いが、菅井さんの丁寧な仕事でおいしくまとめられている、と感想を書きとめた。

菅井さんがくださったメッセージには、麦や酵母をもちいたパンの仕事で自分は生かさせていただいている。自らが育てた酵母を窯で死なせ、己は生き残る、ならば、命をかけてその行為に全力をつくしたいと思う、というようなことが書かれてあった。

わたしが感じた彼の丁寧な仕事は、麦や酵母の命を貴ぶその考え方に寄り添っていたのだ。

わたしは真剣に仕事しているか。静かに考えた。

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サンスエサンス(つくし野)

ある日。西荻窪の364(365ではなくて、サンロクヨン)で開催されている「年末年始のご馳走貯蔵庫展」へ行った。

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四ツ谷でパン教室をされている茂木恵実子さんがクグロフを出品されていたのを買いに。彼女のことを何故かわたしは「モギエミコ」とフルネームで呼んでしまうが、その失礼さを彼女にお許しいただいている。モギエミコは製パンセミナーで見かけるといつも前の席に座り、積極的に挙手してするどい質問をなげかける、情熱のつくり手だ。

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クグロフはブリオッシュ生地にフルーツとリキュールのシロップ、粉砂糖でメリハリの効いた甘さになっている。プレーンな生地だけで焼くと、フォアグラとぴったりなのだと言う。

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ふわりとした赤いリボンを解いて包みをはずす時、裏にバラが隠れていた。Merci、の文字の上下はどこかロシア語のような外国の文字。技術にプラスして、かわいい女性らしさを感じるクグロフだった。

クグロフは29日までの会期中、364で購入できる。
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そしてクリスマスも終わり、町が一気に「和」に向かう頃に、チクテベーカリーの北村さんこと、ちくちゃんから、シュトレンが届く。

お店の子たちにこれをクリスマスプレゼントにしていて、年末にかけてゆっくり食べるのがお店のみんなの楽しみなのだそうだ。なんて温かい。

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実はつい最近、今から12年ほど前、まだわたしがAll Aboutパンで記事を書き始めたばかりの頃、下北沢にあったチクテカフェを取材に訪れた時のことを、思い出すことがあった。

わたしがひとり、カフェに入って行くと先に取材が入っていた。マガジンハウスの雑誌だった。最近マガジンハウスで仕事をいただいたのだが、きっかけがその時ご挨拶した編集者の方の推薦ということだった。12年前にちょっとお会いしただけだったのに、ありがたいことだ。

書きたい、書きたいと言いながらこの12年間を過ごすなかで、本を2冊書いて、ウェブでAll Aboutパンのガイドの仕事を続け、企業の情報誌でインタビューや取材記事を書かせていただいている。でもまだ書きたい、書きたい、と思っている。

昔、自宅で「サトウさん」と名付けた酵母を大事に育てていたちくちゃんは、チクテカフェへの卸しをしながら自らの店を開き、いまはご家族やスタッフも増えて、今年はカフェつきの店舗を南大沢に開いた。工房が変わり窯が変わった。ひとつひとつ丁寧な仕事は変わらないが、昔はバリっとしてどこかかたくななところもあったそのパンが、やさしい表情を見せ始め、ゆっくりと世界へ向かって開いていくような感じがした。ゆたかなバリエーションを持ちながらそのどれもがベーシックで食べたいパンばかりの陳列台をみながらそう思った。その時、新しいチクテベーカリーでサンドイッチを食べながら、気候のせいもあったかもしれないけれど、わたしはあの気持ちいいバークレーのカフェファニーと同じ種類の空気を感じていた。本当に素敵だ。わたしは、いつもちくちゃんの仕事を楽しみにしている。これからも。

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職人さんの仕事や生きかたを知って、自分の仕事や生きかたをかえり見るのは、わたしの癖だ。職人さんを感じようとするとそうなる。そして、心の中で感嘆の声をあげたり、背筋をしゃんとして正座し、黙想したりするのだった。

さて、クリスマスの後のシュトレン。新しい年にかけて、楽しみにいただきます。
               
チクテベーカリー(南大沢)

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December 25, 2013

ベストパン2003-2013、パンとカフェと。

ベストパンがAll Aboutパンの恒例企画になって十数年。

今年グランプリとなったVIRONがベスト10にランクインしたのは、いまから10年前、VIRONのオープンと同じ2003年でした。

当時を振り返ると、メゾンカイザーやPAULなど、メロンパンがなくてバゲットやクロワッサンなどフランスのパン屋さんにあるものだけを販売するフレンチスタイルの「ブーランジュリー」が話題になっていた頃でした。

パンの伝統ある国から上陸したこれらブーランジュリーの系列に新たに加わったのがVIRONでした。VIRONは他とちょっと違って製粉会社の名を冠し、フランス産の銘柄粉「レトロドール」のおいしさを伝えるために「バゲットレトロドール」を看板商品として生まれた店でした。

バゲット。今年、「All Aboutパン」の読者が一番よく買ったというこのパンは、シンプルゆえに素材や職人技の違いが出やすいパンです。パンを研究したい人には好適材料。食べ手にとっては、油脂や砂糖を含まないことから汎用性があり、何にでもコーディネイトしやすいパンである……というところが、ある人には魅力であり、ある人には面倒なこととなります。

何人かのフランス人が言いました。「バゲットを単品で食べるのは、パン屋さんからの帰り道でだけ」。

バゲットはそれだけでは「食事」となりにくい。
日本人はパンをファストフードのようにして摂ることが多いのです。間食や間に合わせの軽食としてサンドイッチやお総菜パンや菓子パンなど、それだけで完結するアイテムが日本には本当にたくさんあるのです。

そしてバゲットやカンパーニュなど、業界では「食事パン」と呼ばれながらもそれ単品では食事として成り立たないパンの食体験に、日本人はまだまだ乏しかったのです。

そこでVIRONはブラッスリーをつくった。それはパンをファッションとして消費してもらうためではなく、おいしい小麦粉を、そのバゲットを世の中に向けて発信する特別素晴らしい場となりました。

VIRONに限らず、この10数年、いや、もっとずっと前から、バゲットやカンパーニュを売る店では、カフェを併設することで、食べかたを提案してきたと思います。

日本のパン市場は大手ホールセールのパン屋さんが大部分のシェアを占めるわけですが、All Aboutのベストパンでランクインするのは規模の大小はあれ、リテイルすなわち小売のパン屋さんです。

リテイルのパン屋さんは大手ホールセールの店では(現在のところは)つくることが難しいとされていて競合しないパンで勝負します。ひとつひとつのパンに職人による微調整が必要なパンや、クラストのパリッとした具合がおいしい、バゲットなど。でも、それを売るからには、食べかたの提案もしなければなりませんでした。

ベーカリーカフェは確かに、おいしい食べ方を体感させてくれる場として機能してきたと思います。昨日も書きましたがAll Aboutのベストパンの店の半数以上がカフェなどを併設したお店でした。

この年末にわたしがふと思っっているのは「ハード系のパンの愉しみ方が”まだ”普及していないからカフェを併設する」という考え方はそろそろ終わりかもしれないということでした。もう来るところまで来た。

まだ普及していないのではなく、もうこれ以上は普及しないのではないか。

欧米がパンの先進国で、日本はおいしいパンを追求してそれに見習った時代もありました。でもこれから先、日本で例えばフランスのようなパン食文化が花開くとは思えない。確かにパンの伝統ある国に見習うところはたくさんあっても、日本には米飯であれ麺であれ、バゲットのようにシンプルなパンの代替となるものはたくさんあります。

と同時に、パンブームと言っている限り、ファッションとして消費されているかもしれないパンが、All Aboutのベストパンではお洒落な食べ物のアイコンとしてではなく、日々食べたいものとして、挙がってきている。

ある店においしいパンがあり、併設のカフェにはそれを「食事」にする幸せなテーブルがあり、そこには店主の提唱する食のスタイルがある。
わたしは今、そういういい感じの空間があちこちで小さな花を開かせているのを感じています。

インターネットの情報をみて、ある種のレジャーとして遠方から電車を乗り継いでもそこを目指す人もいるかもしれない(だから「聖地」と呼ばれるのか、と今これを書きながら納得)。でもほんとうは、近くに住めたらいいのにと誰もが思う魅力ある店。職人や経営者のスタイルを具現化したパン屋さんのカフェ。

この時代のパン屋さんのカフェの新機能は、集会所。いや、これは新しくはないかもしれない。古くからヨーロッパのパン屋さんに見られた機能だったかもしれません。

ひとはそこにパンを買いに、コーヒーをのみに立ち寄る、のだけれども、ひととひととの温かな交流という目的も果たすのです。パーラー江古田やameen's ovenしかり、ル・プチメックの食堂も、また。人と人とのつながりが生まれる場においしいパンがあること。それはパン食文化がある程度成熟した日本の今の、素敵な風景ではないでしょうか。

パンとカフェについてはまた書きます。

ベストパン★2013 結果発表

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December 24, 2013

ベストパン★2013結果発表

速報です。All Aboutのベストパンの結果を先ほど、発表しました。

ベストパン★2013 結果発表

2013年、All Aboutで取材させていただいた店を振り返ればその半数以上がカフェやイートインスペースを併設したお店でした。これは、焼きたてであれ、挟みたてであれ、パンに合う料理とともにであれ、その店の推奨する最良の状態でパンを楽しめる場が増えている、ということでもありました。

とくにサンドイッチに関して、レベルがアップしてきているように思います。今年はわたしもほんとうにおいしいサンドイッチをたくさん食べました。このことはまたあらためて書くとして。

All About読者が選んだ今年のベストパン、まずはご覧ください。

ご協力くださった読者の皆さま、パン屋さんの皆さま、All Aboutの皆さま、ありがとうございました。

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December 20, 2013

365日、OPEN

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もと「デュヌラルテ」の杉窪章匡さんが2013年12月12日、代々木八幡に新しいスタイルのベーカリーをオープン。

365日【代々木八幡】

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杉窪さんのお話を伺っていると、しなやかな思考回路と固い信念、そして潔よさを感じる。

「これはこういうもの」という一般論でものづくりをしていない。今まで培ってきた理論を頼りに創り出す。

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おそらく彼は常に、素材や工程に対して「それは本当に必要か?」というようなシンプルな問いを投げかけて、新しいパンと対峙している。

だからあんなにおもしろいパンが生まれるのだと思う。

おもしろいといっても、キワモノではまったくない。

不易流行。脈々と続く伝統のその先の、ひとつのかたちだ。

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December 06, 2013

パン欲 日本全国パンの聖地を旅する

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時々、こんな本を書いてくれてありがとう、と感謝したくなる本に出合う。

池田浩明さんの新刊『パン欲 日本全国パンの聖地を旅する』(世界文化社)。

タイトルだけ見たら、いつものわたしなら読む気がしない。聖地ってなに。とよくメディアの人にかみついているくらいだから。でも、聖地はともかく、この本は素敵だ。

まだ、読んでいる途中だけれども、まさに「パンを食べ、人を食べ、土地を食べる」池田さんの文章が、職人さんの言葉を、その息づかいを、その仕事を、そのパンを、シンプルに、誠実に伝えている。彼のパンへの愛はマニアックだけれども、その文は職人的だと思う。

この列島には、こんなに素敵なパン屋さんたちがいると知って、あるいは再確認して、嬉しい。
パン屋さん巡りをしないわたしのような人でも、その職人仕事に、その店の空気に、触れたくなってきた。

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December 04, 2013

ネスカフェミラノ カフェオープンカレッジ@銀座おとな塾

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花屋さんや書店などの非飲食業に併設のカフェに多く導入されているというコーヒーディスペンサーマシン「ネスカフェミラノ」。12月3日、ベーカリーを対象にした講座が銀座で開催された。

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コーヒーがカスタマイズできるマシン本体や、カフェ支援プログラムなどのサービスの案内、そしてラテアートの実演の他、ベーカリーコンサルタントの保住光男さんの講演「ベーカリーカフェ繁盛店の秘訣とは~消費者ニーズ対応型ベーカリー&ベーカリーとカフェ併業成功事例」があった。

個人的に興味深かったことのメモ。
冷凍生地大手ベーカリーチェーンA店B店のうち、A店の店舗数が減少傾向にある。それはカフェの併設数が少ないことに関係している。すなわち冷生地のパンは劣化が早いので、買って帰って食べるというよりその場で食べたほうがおいしいからだという。そうなのか。
カフェ併設の「よさ」をいろいろ聞いた。わたしがいつも考えるそれとは視点が違って興味深かった。

いずれにしても、パン屋さんではパンがおいしくなくては、コーヒーマシンがあっても何にもならない。これは、おいしいパンを焼いている店で、ちょっとしたカフェを併設したいけれど、バリスタを雇うほどのこだわりはないし人件費が、というときに、コーヒーマシンの選択肢にはこんな便利なものもある、という情報だ。

初期投資なしで、シンプルにボタンを押すだけで誰が作っても均一な飲料になり、メンテナンスや販促の支援プログラムがついているのが特徴のこのマシン。有効活用できそうなパン屋さんがいたら、教えてあげようと思う。

興味のある方は「ネスレプロフェショナル ネスカフェミラノ」のサイトをどうぞ。

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