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December 2012

December 26, 2012

サンドイッチの発想と組み立て 世界の定番サンドイッチとその応用

友人のユイさんがサンドイッチの本を出した。

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ユイさんに初めて会ったのは、8年ほど前、東京と大阪で開かれた
サンドイッチセミナーで、西川功晃さんのデモンストレーションの前座として
講演をさせていただいた時で、彼女はシェフの手伝いで来ていた。

それから、おいしいサンドイッチのある所で何度も、彼女の仕事をみてきた。
取材先のパン屋さんでは彼女が薦めたsomething goodが挟まれた、おいしい
サンドイッチに何度となく出合った。
わたしがパンよりも、(ユイさんに教えてもらった)素材のプロフィールを
知っているので、パン屋さんに驚かれることも少なくなかった。

日本のパン業界の淵、みたいなところがあるとすればそこに腰掛けて
わたしとユイさんはよく、何時間も話をした。
どこのパンが美味しいということではなくて、パン屋さんが商品開発の現場で
抱く疑問やぶつかる壁について、共感することが多かった。

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最初にベーカリーやカフェのサンドイッチについて、彼女は書いている。

そこでは「目新しいもの」もしくは「コストも手間もかからないもの」が求められることが多くありました。でも私自身が食べたかったのは「定番の組み合わせ」や「上質な素材を使い、丁寧に作られたもの」でした。

深く深く共感する。

ユイさんのつくるサンドイッチはセンスがあって、おいしい。
とっても大きいとか、何かが普通よりたっぷり挟まっているとか、
身体にいいとか、○○産の○○使用とかではなくて、あたりまえで、
ごまかしがない、安心な味がする。そして、美しい。

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そのユイさんの、サンドイッチの教則本のような本。

日本人は昔から手先が器用なので外国の物をなんでも、アレンジしてしまうのが
得意だけれど、文化的側面も知ったうえで作ったらもっと存続可能な、よい創造が
できるかもしれない。だから世界のサンドイッチの文化的背景も調べてある。

そして、これはマスコミの功罪もあるけれど、目新しいメニューに次から次へと
トライするのではなくて、世界中で脈々と作り続けられてきた定番サンドイッチに
じっくり向き合ってみること。それがこの本では可能になる。

プロにもアマチュアにも。
一通りの世界の定番は勉強になるし、ユイさんのセンスでつくられた
今風のサンドイッチはどれもトライしてみたいものばかり、240ページの充実の内容だ。

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そして最後に。ユイさんは楽しんで、と書いている。
これはとても大切なことだと思う。

昔、有名なフレンチのレストランにひとりで出かけたユイさんが
シェフに教えてもらったという言葉を、当時、行き詰っていたわたしに
教えてくれたことを思い出す。あとになって、論語の言葉だと知った。

これを知る者はこれを好む者に如かず
これを好む者はこれを楽しむ者に如かず

如(し)かず、はかなわない、ということ。楽しむ人が一番。
サンドイッチもそうだなぁと思う。

パンに関わる仕事をする人ならば、もう一度きちんと知って
とことん、楽しみたいですね。それはきっと、周りの人たちを
ゆたかに、幸せにすると思う。もちろん自分のことも。

やったねぇ。ユイちゃん。
でも、わたしたちの戦いは続くね。頑張ろうね。

この本で、サンドイッチの楽しみを知らなかった人たちが、
真のサンドイッチづくりに目覚めて、日本のサンドイッチの質が
ちょっとばかりグレードアップすることを、ひそかに楽しみにしている。

『サンドイッチの発想と組み立て』 ナガタユイ(誠文堂新光社)

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December 25, 2012

ベストパン★2012 結果発表

All Aboutで読者が選ぶベストパン★2012 発表しました。

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ベストパン★2012 結果発表

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December 23, 2012

ブレッド&サーカスのその後

All About読者が選ぶ、年に一度の企画、ベストパン。

そもそも読者がどんなパン屋さんを好きなのか知りたいという個人的な興味から始まった企画で、その年に印象に残ったパン屋さんやいつも通うパン屋さん、好きなパン屋さんについて投票してもらうものです。集計はAll Aboutのシステムの方にしていただいて、重複票などははじいてデータをいただいています。これは、それこそ超個人的な感覚である「おいしさ」とか売上でランキングしているわけではなく、10年ほど続いている企画です。

そのなかで、2007年から2010年まで4年連続グランプリを獲得し、昨年からは永久ベストパン店として殿堂入りしたブレッド&サーカス。

今年もベストパンの記事を作成するにあたり、永久ベストパン店の近況も記載したいと思い、ブレッド&サーカスの寺本康子さんにお聞きしたところ、素晴らしいメールをいただきました。
許可を得て、全文掲載いたします。

以下、ブレッド&サーカス 寺本康子さんからのメールです。

***


All Aboutベストパンで殿堂入りをさせていただいてから、
ブレッド&サーカスは大きく変化しました。

東日本大震災の影響は、震災後すぐに、ただちにあらわれました。

震災の津波の影響で原子力発電所の事故があり放射能漏れの懸念がでてから、
なお一層の影響がありました。

それらは幅広く、また先の出口が見えないものでした。

もっとも大きな変化は粉を変えたことです。
粉はストレートに商品の味に影響を与えるものです。

通常営業を続けながら、すべての粉を変えることは気力体力を消耗しました。

粉の産地を変更したことを、風評被害の一端を担うかもしれないと思い、公表せずにいましたので、メールやお電話でのお問い合わせがたくさんありました。

こちらも気力体力を消耗しました。


*

ブレッド&サーカスの立地は都内からさほど遠くないにもかかわらず、
周囲に気を取られることなく自分の道を進むにはほどよく静かな場所です。

海外からのベーカリーの出店ラッシュを遠いことのように見ていました。
日本の社会におけるベーカリー人気の勢いを強く感じました。

それでもブレッド&サーカスには少しずつ固定客が増えてまいりました。
ありがたいことです。

ここ数年の特徴としまして、お客様の年齢層の推移があります。
平均年齢が高くなりました。
お客様の70%以上は50代以上のお客様が占めています。

50代以上の年齢層の方々が遠方からブレッド&サーカスのパンをもとめてご来店してくださることに、たいへん感激しています。しかもたいへんにパンに造詣が深いといいますか、パンに詳しい大人の方々が、この日本にはたくさんいらっしゃるのだと実感して、たいへんにうれしくたのもしく感じます。

それらの方々は、損得なくこころからパンをたのしんでいらっしゃいます。

食事の大切さをよくご存じで、家族で、あるいは友人知人との食事の時間をとてもたのしんでいらっしゃいます。

家庭料理がつくられなくなったと聞くようになって久しいですが、かつてのものとは違った形での家庭料理や家庭での食事の形態に、すこやかでシンプルでなんでもない、でもおいしいというハード系の食事パンは、確実に必要とされています。


それはまさにブレッド&サーカスにとって望んでいる方向性です。

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とにかくカンパーニュ系の人気には目を見張るものがあります。

ブレッド&サーカスのカンパーニュは、日持ちのこと、内層のことなどを考慮して、かなり大型ですが、ひょいひょいと大人の方々がカンパーニュ系のパンをふつうに購入してくださる様子を拝見していると、ほんとうにうれしくなります。

のちほどお客様から、○○と食べたらおいしかったわ! ○○とサンドイッチにしたらおいしかったわ!とご報告をいただきますが、その瞬間のよろこびはたいへんなものです。うれしいです。

数年前と違って最近のお客様は、カンパーニュ系にもさまざまな「味わいの違い」がある、ということをよくご存知です。

以前はどれも同じと考えていらしたようです。でも今はそれぞれのパンが鮮やかに味が違うということをよくご存知です。たのもしいと思います。

どのパンも同じ生地で作るということが当たり前であった、あのころのパン屋さんと今は違うということをよくご存じであることに、わたしは強い満足感を感じます。

それもやはりブレッド&サーカスの真骨頂と申し上げてよいと思います。

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最近はブレッド&サーカスのパンを自由に召し上がっていただいています。

サンドイッチ、シチューやスープと、朝食として、といった基本のパンの食べ方はもちろんおいしいです。
しかし今はインターネット経由でたくさんの情報があり、またレシピ提供サイトも充実していますので、さまざまにパンをたのしんでいただいています。

これはすばらしいことだと思います。

これもまたブレッド&サーカスにはたくさんの違った種類のパンがありますので、ブレッド&サーカスへの需要が高まることになっているのかもしれません。

*

最近気に入っているパンの食べ方は、保存食を上手に利用する食べ方です。

燻製、ピクルス、パテ、ジャム、オイル漬け、干した野菜、ソース類、ディップ類、フィキシング、チーズ、生ハムやハム類、ありとあらゆる保存食を(手作りしたものがやはり心も潤うパン食になるのですが)、じょうずに取り入れながら、パンをたのしむ食事をするとHappyになります。

たとえば、牡蠣のオイル漬けをのせて、サラダと豆類の煮込み。
たとえば、パテをスリランカカレーと野菜のマリネと。
たとえば、鶏肉と野菜の炒め煮とかぼちゃのグラタンとあっさりのスープと。
といったように。

パン食でこころが潤うことが、Happyでたいせつな1食を豊かにしてくれます。


(写真は今年新しく販売をはじめた「ベーシックカントリーブレッド」550円)

***

寺本康子さん

どうもありがとうございました。

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December 21, 2012

ナショナルデパートのパンの本

人気のパン屋さんのあのパンを家でも作ってみたい、と思うのは家でパンをつくる
多くの人が思うことで、それはレストランで出合った素敵な一皿に触発されて、
家庭の夕食で、その一皿を再現しようと試みたりする、その行為に似ている。

だから世の中には人気のパン屋さんによるさまざまな家庭製パンの本が出ている
のだけれど、それはもちろん、お店の「あのパン」とは異なっている。
異なっているけれど満足するのは、自分の欲するその店らしさが、その人らしさが
家庭向きに作られたパンのなかにも垣間見えるところかもしれない。
それは自分が作ったちょっと不格好かもしれない唯一無二のパンだけれど、
好きなお店の要素も入っているのだから愛すべきパンとなるはず。

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わたしはパンのおいしさは作り手の目や、手などすべての感覚によるところが大きい
と思っているので、素材にずっと目を配ってと接して感じながらつくりたいと思う。
そして本を見ながらつくるのならば、信頼するヨガのインストラクターの言葉のように
我が身を素のままでゆだねられる本でなくてはと思う。

本は、文字言葉と写真で伝える。
パン作りは、小麦と酵母と水と塩を混ぜて発酵させて成形して焼く、なかで、
いろいろなバリエーションがあるのだけれども、ナショナルデパートの秀島康右さんの
伝え方は言葉の端のほうまで、さまざまな仕事をしながらひとりでパンを焼いてきた
オリジナルの体験が活きて、そのときの厳しさが言葉の優しさとなっているようで、
いいなぁと思う。

最初の「パン作りを始める前に」というところに、お決まりの「酵母菌とは」の
説明がある。空気中には自然物を分解して発酵させる」ための酵素や酵母菌などの
菌類が数多く浮遊し、生命の循環サイクルを形成しているという話。

”パンを焼くという行為も、自然の循環サイクルの中で万物が土へと帰るために必要な「分解」と「発酵」の現象をボウルの中で再現しコントロールすることだと考えています。”

以前、岡山の店から、酵母の採取場へ案内してくれる彼について行く間、そんな話を
清掃業についていた時の話とからめて聞いていたことを思い出す。腐敗の話もしたっけ。

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ナショナルデパートといえば5kgのカンパーニュ。中身のカラフルな。
カンパーニュに四季、だなんて、季節感を意識させる名前をつけるのは、ピンクや黒や緑や黄の色をつけるのは何故か。それは日本人が好きな楽しさがあるから。と、この本の紹介にあたっては書いておこう。

もちろん楽しいんだけれど、ほんとうは、食事としてのシンプルな配合の、茶色いベーシックなパンを焼きたいと思っても、地方では(いや、首都圏でもそうかもしれない)それが受け入れられず悔しい思いをした彼が、そうしたパンを少しでもメジャーにするためにとった方法なのだと思う。

わたしは彼の焼く、茶色の普通のカンパーニュやライ麦パンがより、好きだ。
そうしたパンはこの本の後半にもあるけれど、それを、七輪で焼いてバターとレモンを絞って食べさせてくれたりした、岡山の取材を思い出すと、ほんとうにこの人、秀島さんの感覚に拍手を送りたくなる。そしてこういうパンを焼く人が、居心地の悪い思いをしないよう、茶色のパンを、もっと広めていかなくてはと思う。

話がちょっと脱線してしまったけれど、久々に感動したレシピブックでした。

家でパンを焼かれる方は、いつもとちょっと違うパンを焼いて、みんなでわけて食べる楽しみを、このセンスあるレシピブックで、ぜひ。

『バターと卵を使わない
ナショナルデパートの「四季ノカンパーニュ」とライ麦のパン』/秀島康右 

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