« お弁当のおいしさの理由 | Main | MONDIAL DU PAIN 日本代表準決勝 »

March 09, 2010

酵母とこだわり

「天然酵母というものについて、考えているんです」
とそのパン屋さんは言った。

「天然酵母パンないの……?こだわりがないのね
と言うお客さまがいたので」

天然でない酵母などないのだから、イーストも天然酵母です
と言えば……?と、教師の模範解答のように言いかけて、
いや、これでは伝わらないな、と思う。

「それではなんだか偉そうですし……」と彼は言う。

そうですね。

そのお客さんが「こだわり」とか「天然酵母のパン」というのは
つまり、何かこう、安心感があって、からだに良い感じがして、
発酵促進剤などは使わず、無論、機械まかせでなく、パン職人
でなければ作ることができないようなパンのことではないか
とわたしは訳します。

手作り、焼きたて、天然酵母、こだわりといった言葉は
大きく掲げてしまうと、ちょっと寂しくなる。
本来意味があったはずなのに、いつのまにか本質がなくなっている
と気づかされることが多い言葉だから。

だから酵母は、ひっそりと育てればいいのだ。
ひっそりと行っても、酵母を上手に操る職人のパンは饒舌。
それにかけるこだわりは、話した言葉の端々から、
店の隅々から、伝わってくる。
センスのある店は、みんなそうだ。

そのパン屋さんは、ドイツパン屋さんではないけれど、
ドイツパンがとても好きなのだと言った。
大事にしている自家製のサワー種は、こんなに寒い日でも
温かい工房の棚の上で活発に、ふつふつと息をしていた。

Diary100309


|

« お弁当のおいしさの理由 | Main | MONDIAL DU PAIN 日本代表準決勝 »

others」カテゴリの記事